Home > blog > thailandcambodia1998

thailandcambodia1998のアーカイブ

Piece.13 「人旅」

Piece.13 「人旅」

 翌日も晴天で自転車を借りて走り回った。帽子も何も被っていなかったので途中で頭がクラクラした。喉が渇いて仕方なかったので遥か向こう霞んで見える屋台らしきもの目指してペダルを漕いだ。広く真っ直ぐ伸びる道が苦痛で、永遠に辿り着けない気がしていた。大袈裟だが、この時は本当にそう思ったのだ。
 なんとか無事に辿り着いたが期待していた飲み物は売ってなく、ビンに入った何かの実を何かの汁で漬けたものが並んでいた。ちょっと味見させてもらったが珍妙な味でおいしくはなかった。しかし背に腹は変えられず少しでも水分を摂ろうと、試食したものとは別の、梅の実が赤い汁に漬かっているやつを一袋買い少し離れた木陰で口に入れてみる。
気が遠くなった。
 辛くてしょっぱくて酸っぱかった。おまけに砂糖をまぶしてもらっていたので変な甘さが加わり吐きそうになった。喉が潤うどころの話ではない。それまではどんなものでも食べていたのだが、このとき初めてタイ人の味覚は理解出来ない、とつくづく感じた。(後日、屋台でトムヤムクンを飲んでその感じは確信に変わった)

 夜、夜行バスでバンコクに戻るために適当に選んだバス屋でチケットを買い、待合室で日記を書いていた。タイで日本米を作る仕事をしている日本人のお爺さんに夕食をご馳走になり昼間の肉体的、そして精神的疲労はかなり回復していた。だが、少しウトウトしていた。
 突然、後ろから頭をガシっと鷲掴みにされた。
 異国の地で異国の人に囲まれ夜1人でウトウトしながらバスを待っている時に突然頭を後ろから鷲掴みにされたとは思えないほど落ち着いて僕は後ろを振り向いた。そんな気はしていたのだ。そこには僕の予想通りの人が笑って立っていた。
彼女とは1週間前にチェンマイのゲストハウスで出会ってから、メーホンソンの首長族の村、ゴールデントライアングルへのツーリングなど、一昨日の朝別れるまで別の男の人を含めて3人で行動してきていた。チェンラーイで男の人は帰国のためバンコクに発ち、彼女はチェンマイに戻り、僕はスコータイを目指した。彼女もスコータイにもアユタヤにも行きたいと話していたし、バンコクに戻る予定日も同じようなタイミングだったので「もしかしたらまた逢うかもね」などと言っていた。昨日からこの町にいたらしい。
  2日しか経っていないのだが、再会を喜びあった。そして僕らは再び一緒にアユタヤへ向かうことになった。

タイ・チャーン島
 こんな風に、旅をしていると色々な人に出会う。
 日本で普通に暮らしていたのでは絶対に出会えないような変わった人、数時間一緒にいただけで妙に気が合ってしまう人、一緒に行動しているもののあまり好きにはなれない人、屋台でたまたま相席になった人、ベッドが隣同士だった人。
 そして偶然再会することもある。
 チェンマイで別れた人にスコータイで。
 カンボジアで出会った人にバンコクで。
 11月にチェンマイで出会いお互い帰国したのに2月にバンコクの両替屋の前で。
 同じく11月にカオサンの宿にいた人が2月に行ったときまた同じ宿で。
 一度切りしか会えない人もいるし、偶然再会する人もいる。今でもメールのやり取りをしている人もいる。
 どんな出会いであれ僕にとって大切な旅人たちであることに変わりはない。

~終~

( 1998 / Sukhothai / Thailand )


Page 1 of 1512345...10...Last »