香港夜歩

 香港?
 周りの人はそう言った。
 今までの旅先とは少し方向が違っているらしい。
 自分でもそう思う。

 香港・九龍城公園近く

 でも何か面白いものがありそうな気がしていた。
 イメージの中の香港が勝手に頭の中で膨らんでいた。

 香港・九龍城公園近く

 無秩序に増築されて巨大な迷宮のようになったコンクリートマンション。
 路地の隙間を横切る旅客機。
 夜の闇に浮かぶネオンの看板。
 竹で組まれた建築足場。
 海に浮かぶ無数の水上生活者の船。

 香港・九龍城公園近く
 
 そのほとんどが既になくなっていているのはもちろん知っていた。
 それでも実際に歩いて自分の目で確かめたかったのだ。

 香港・夕暮れ
 
 とにかく歩いた。
 失われてしまったイメージを探したかったのか。
 新しく変わるものを見つけたかったのか。
 それとも頭の中でモヤモヤしているいろいろな物事を歩くことで整理したかったのか。

 香港

 自分の中で大切な何かを失くしつつあるのに気がついた。
 
 香港

 でもそれが何なのか分からなかった。

 香港

 ただ、とても大切なものだということだけは分かっていた。

 香港

 やがて答えが見つからないままいろいろな考えは香港の闇の中に溶けていった。
 そして僕は行き先を見失ってしまった。

 香港

( HongKong / 2008 )