何を求めて

 初めて訪れたのは1998年。
 翌年の1999年、3年後の2002年。
 そして今回が4度目のアンコール遺跡だった。

プノンバケンからのアンコールワット

タ・プローム

 広大な大地の中、森に埋もれるようにして点在する巨大な石の寺院郡は、何度訪れても毎回違った顔を見せてくれた。
 時間によるわずかな光の具合であったり、眺める場所であったり、季節の違いであったり、少しづつ異なる様々な条件の組み合わせが見るたびに違った印象を作り出すのだ。もちろん、毎日続けられている遺跡の修復によって実際に見た目が変わっている遺跡も多くある。しかし細かく変化しているとはいえ根本的な存在感は変わることなく、再訪する人々へこの土地に対しての安心感を与えてくれる。

 これに対して、周辺の町の変化には目を見張るものがあった。
 荒地だらけだった町の周辺には巨大なホテルが立ち並んでいた。外灯もあまりなくて日が沈むと急に暗くなった町の通りは、レストランやバーのネオンで明るく照らされていた。シェムリアップは順調に観光拠点の町として発展していた。おかげで食事の選択肢も増え、夜の町も歩きやすくなった。道路は舗装され移動が楽になった。しかし町に戻ってきたという感覚はなく、初めてやってきた町のように思えてならなかった。

ベンメリア

 今回初めてベンメリア遺跡とコーケー遺跡を訪れた。
 道路状態が良くなり、今までは危険で観光客が見学しにくかった遺跡も徐々に整備され始めていたからだ。
 メインとなるアンコールワット周辺の遺跡に比べより野性味溢れ、ベンメリアは正直いって歩くのも困難なくらい木々や下草に覆われていた。町から少々遠いので観光客がどっと押し寄せるような遺跡にはならないだろうが、これからの見所の1つとなるだろう。
 
 町に戻り、バンコクのカオサン通りを思わせる状態になってしまった通りを歩きながら思った。
 共同シャワーの安宿に泊まり、1人のときは地元の人たちが利用する食堂で食事をし、バイタクの後部座席にまたがって土ぼこりにまみれながらの移動。
 今までと変わらない旅をしている。
 それなのに今までの旅とは違った感覚を覚える。
 町が変わってしまったからとか、そういう理由ではないように思う。
 
 今までは何も考えずに、ただ旅を楽しんでいた。
 でも今は楽しむだけではなく、何か別のものを求めようとしている。
 それが何なのかはいくら考えても分からなかった。
 答えにたどり着いてしまうと、もう旅には出られなくなりそうな気がした。

アンコールワット夜明け

 少し怖くなって、歩く速度を速めた。
 目の前に、同じ宿の旅行者と夕食の待ち合わせをしたレストランが見えた。

( Angkor / Cambodia / 2006 )