5-06 ジャンギチェックポスト

 両側を切り立つ崖に挟まれた谷川沿いの道路が少し開けた場所に、ジャンギチェックポストはあった。石とセメント造りの小さな小屋のような建物が2軒ほど建っていて、その前の道路には90度近い角度で上がったままになっている跳ね上げ式の遮断機がある。
 バスは遮断機手前の道路脇に停車した。車掌に促され、外国人はバスを降りていく。僕も隣のオバサンと潰れていた青年に通してもらい、バスを降りた。フラットな太陽光線が眩しく、日向にいるとじりじりと暑い。
 入口の扉もないような左側の小屋がオフィスだった。木製のテーブルが2つと椅子が2、3脚、整理棚。警官の制服を来た男が机に座っていて、助手らしき男と2人で外国人の旅券と入境許可証を集めてノートに必要事項を記入していく。30分程度かかると言われたので、外で待つことにした。

インド・ジャンギ

 スピティでは、ジャンギからスムドの間で入境許可証(一週間有効で延長可能、無料で取得できる)が必要になる。スピティはヒマーチャルプラデーシュ州だが、その北のジャンムー・カシミール州も含め、この地域はインド、パキスタン、中国の国境が複雑に入り組んでいて、場所によっては国境線さえも曖昧になっている(未確定国界、暫定線などと言うらしい)。特に、ジャンギ~スムド間は北東へ10数キロ、山を2つ程越えると(3~4,000メートル級では山ではなく丘扱いになるらしいが)中国チベット自治区に入ってしまうほど近接している。スムドのチェックポストの前に居たインド人の男に「ここはチベットにとても近いんだろ?」と聞いたら、「近い、というかインドなのかチベットなのか分からないような場所だ」と言われるくらいなのだ。そのため、外国人はジャンギ、チャンゴ、スムドにある各チェックポストで、入境・出境日、氏名、旅券番号、目的地、滞在予定場所などを申告しなければならないのである。

 チェックを受ける必要のない地元の人達は、殆どがバスの中で待っている。好き好んで日差しの強い車外には出ないようだ。僕は灰色に濁った水が流れる川に向かって小用を済ませた後、小屋の横に積み上げられた建築資材に腰掛けていた。少し暑くても長袖シャツの腕を捲くる気にはなれなかった。ここに来て、少し日焼けを気にするようになっていた。
 大型のジープに乗った、インド人の家族連れがやって来た。彼らはチェックを受ける必要はないが、右側の小屋でチャイを飲んで一服するようだった。やがて、今朝レコンピオのバススタンドで激昂した女性と連れの男性がそのジープに乗り込み、走り去って行った。交渉して空いている座席に座ることができたらしい。うまくやったものだ。
 25分で入境手続きは完了した。旅券とスタンプの押された許可証を警官から返してもらい、僕達はバスに乗り込んだ。座席には若者がゆったりと座っていたが、僕が戻ると隣に移り場所を開けてくれた。また暫くの間、彼はオバサンの下で潰れていなくてはならないのだ。オバサンが早く降りてくれることを祈るのみである。

( Jangi / India / 2002 )

インド・ジャンギ