5-03 スピティへの道 03

〈2002年4月30日〉

「あと2週間?」僕は聞き間違いかと思い、窓口の男に聞き直した。
「だいたい20日くらい」彼は事も無げに答えた。20日?2週間ではなかったのか?6日も増えている。
「はっきりしたことは分からないのか?」
 僕は少し苛立っていた。先刻、ヒマーチャル・プラデーシュ州観光局に行った時も曖昧な回答しか得られなかったからだ。
「観光局に聞きに行け」
「さっき行ってきた。そこでも2週間くらいだと言われた!」少し声が大きくなった。彼に当ってもしょうがないのだが、つい語気が荒くなってしまう。
「だったらそんなもんだ。クンザン峠の雪が少なくならないとどっちにしてもだめだな」少し口元を緩めて男が言った。愛想笑いのつもりだろうか。自然が相手なので、はっきりした見通しは本当につかないのだろう。
「7月になれば確実に通れるよ」と言われても、そんなには待てない。
 ある程度覚悟はしていたが、こうもあっさり言われるとは思っていなかった。
 今現在、目的の場所に行く手段が無くなったのだ。こんな経験は初めてだったので、少々落ち込んでしまった。ダラムサラから夜行バスで8時間、そのまま乗り継ぎ9時間近くかけてマナリに辿り着いたのが昨日の午後6時半過ぎ。そして、再びスピティへの道が閉ざされてしまった。疲れた。腰も痛い。こうして、僕の2度目の挑戦があっけなく幕を閉じた。