4-05 アウランガーバード~ホスペット~バダミ

 斜めにバスが6台程度は駐車できる広さの乗り場が両側に確保された、比較的小ぢんまりとしたアウランガーバードのバススタンドの夕暮れ。木製の長いベンチが向かい合わせで何列も置かれている。バスを待つ人々や家族連れが、各々の場所を見つけてバスを待っていた。棒3本を上から3分の1の所で紐で縛っただけのような簡易三脚に炭火の小さな七輪を乗せ、大きな笊で炒った落花生を売り歩く少年の発する、魚河岸や市場でよく耳にするような独特な調子の呼び声が聞こえてくる。西の空は殆ど夜の幕に覆われつつあり、かろうじて隣の建物や背の高い木々の上の辺りだけに赤紫色が残っていた。丸い屋根が緑色の照明で照らされた、モスクらしき白い塔も見えた。
 ここには100人近い人々がいるにもかかわらず、日本人、いや外国人旅行者は僕だけだった。僕は今偶々インドの辺鄙な町のバススタンドに1人で居る。だが、日本にいても所詮は同じ事だ。街中で、言葉が通じて良く似た顔立ちをしている人々に囲まれていても、その殆どは自分と何の接点も持たない匿名の集団であることに変わりはない。その中で、個々の関係で接することが出来る人、ましてや親しく心を開くことができる人間が一体どれほどいるというのか。だから日本に居ることと、インドの夕暮れのバススタンドで座っていることの違いは、帰るべき場所が少し遠いだけとか、そんな程度である。
 これから夜行バスに乗り路線バスを幾つか乗り継いで、バダミに着くのはおそらく明日の夕方である。

ホスペット

( Aurangabad / India / 2002 )