4-03 アジャンター~アウランガーバード

 
 窓側の座席には日差しを遮るものもなく、右半身が静かに、しかし強烈に焼けていた。吹き込む熱風は時には目が開けていられないほど熱く、呼吸が苦しくなる時さえあった。
 バスは3時間半でアウランガーバードに到着した。南北に伸びる太い車道を南に歩き、ガイドブックで目星を付けた宿の名前を探した。市街地は東側。道路の西側には荒地が広がり遥か向こうには赤い岩山が見えた。デカン高原自体が、この赤い岩山でできているようだ。荒地の端に立っている何処かのホテルの大きな看板が、西日を受けて道路にくっきりとした影を落としていた。影の中には、荒地に掘っ立て小屋を作って住んでいる家族とチャイの露店と世間話をする男達がいた。道路の反対の端を歩いている僕にはその影は届かない。

 翌々日、早朝の涼しいうちから町の中を歩いていたのだが、何時の間にか昼になり太陽は真上にあり、只でさえ平板な町には影が殆どなかった。道を迷い始めていたので、ひとまず先日歩いた大通りに出るため交差点を西に曲がった。水気の無い荒れた空き地が右手に広がり、左手には煉瓦作りのような低い家屋が立ち植え込みの緑も多かった。照りつける光の乱反射のせいなのか熱射病にでも罹ったのか、視界が少し白っぽく茫としている。
 道路脇にゴミが散らばっていた。場所によっては山積みになっていた。その間に、2頭分くらいの臓物が無造作に捨てられていた。おそらく山羊か羊か。さほど古くはない様で白から薄桃色のそれらは張りのある薄皮に包まれてグニャリと重なり合い、不定形のぶよぶよした塊となっていた。腐臭どころか何の匂いもしない。ぬらりとした表面から水分が急速に蒸発してゆく。蝿か虻が数匹上空を旋回しながら着地点を探っていた。
 臓物の向こうに見える平屋の家の外に3人の小さい男の子がいて、こちらを見ていた。1人が手を振ってすぐ壁の裏に隠れてしまった。
 ますます視界が白く眩んできた。

( Aurangabad / India / 2002 )