2-11 分水嶺

なんだかんだあったけど、
多分僕はここに立つために、
今まで歩いてきたんだ。
標高5,416メートルの場所で、
震えながらそう思った。
今来た道も、
これから歩く道も、
雪で覆われ、
急な角度で地上へと伸びていた。
両側の更に高い斜面を覆う氷が、
曇り空の向こうから届く光を凝縮し、
鈍く輝いていた。
行く先の空は青い。
希薄な空間。
呼吸が速くなる。

nepal2002-52

吹き抜ける風が耳元で、
ぞわぞわと囁く。

―ここは、
―静謐な世界、
―過去も現在も、
―全てが、
―永遠に、
―留まり続ける、
―変わらない世界。

でも僕は、
たとえ、
不確定でも、
不安定でも、
儚くても、
それでも、
未来を見たい。

風が斜面を駆け上って行く。

僕は、
青空の方へ、
地上の方へ、
歩き出した。

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( Nepal / 2002 )